山梨の大学に通う娘の元へ、友人との旅行途中で別行動で訪れた時の話です。
あれは、娘が大学三年の秋でした。
久々に会い、娘のアパートへ1泊しました。
追加の荷物と帰省の迎えの為に、1年に1回は娘が暮す場所を訪れていました。
娘は、二つの鍵がついた鎖を首から下げています。
二つの鍵がジャラジャラとぶつかり、音がします。
去年は確か付けていなかったはずでした。
「ソレ、どうしたの?前はつけていなかったのに」
娘は鍵についた鎖を手に取り「こうすると失くさないから」と、言いました。
「やっと、そんな工夫をするようになったか」と、些か茶化しました。
娘の顔は、少し曇り、悲し気になりました。
何かあったなと、ピンときました。
「もしかして、鍵をなくした?」と問うと、娘は隠さず話してくれました。
大学の飲み会でかなり遅くなり、アパートの鍵を開けようとしたら、失くした事に気づいたそうです。
アパートに入れず、大家さんが起きる6時頃まで一晩中外で過ごしたと語りました。
アパート周辺を明るい所を探して歩き回わり、街燈を眺めたと言います。
情けなくて悲しくてずっと涙が止まらず、一晩中泣きっぱなしだったと話しました。
生まれ育った土地から離れた娘は、大学4年に入るまで友達がいませんでした。
親しい友人がいない状態では、誰かに頼る事も出来なかったのでしょう。
辛い思いをして彼女が学んだ答えは、鎖に鍵を付けて首からかけて失くさない工夫でした。
娘はアパートの鍵紛失体で、心が痛い思いをして学んだのでした。